医療情報標準化推進協議会(HELICS協議会)とは

 HELICS協議会は医療情報システム開発センター、日本医学放射線学会、日本医療情報学会、日本画像医療システム工業会、日本放射線技術学会、保健医療福祉情報システム工業会が幹事会員を務める医療情報標準化の推進団体です。現在、幹事会員を含め10団体が会員となっています。HELICS協議会は、会員内外から提案される標準規格のうち、我が国の医療情報分野に適用し利用することが望ましい標準規格を選択審議し指針として定める活動を行っています。一方、厚生労働省は保健医療分野で適切な情報化を進めるために、厚生労働省標準規格を採択し推奨しています。厚生労働省標準規格の制定に際しては、「標準に関する関係者合意を形成しうる団体」として、HELICS協議会を選定し、関係者の合意の下に策定された規格を保健医療分野の標準規格として認定し、推奨する施策を進めています。


医療情報の標準化とは

 日本工業標準調査会のホームページに、標準化について次のように解説されています。

『標準化(Standardization)とは、「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること」ということができます。また、標準(=規格:Standards)は、標準化によって制定される「取決め」と定義できます。標準には、強制的なものと任意のものがありますが、一般的には任意のものを「標準(=規格)」と呼んでいます。』

 一例として、音楽CDや映像DVDの場合を考えてみましょう。CDやDVDは、その記録方式やデータ形式が標準化されているので、ベンダー(メーカー)等を限定されることなく、どのディスクプレーヤーでも再生・記録が可能です。もし各社がそれぞれ独自の設計でディスクやプレイヤーを作っていたら、こんなことはできません。現在では、ネットワークでも好みの音楽や映像を購入、再生できるようになりましたが、このようなことが可能となったのも音楽や映像の記録方式や再生方式が標準化されているからです。

 医療情報の世界ではどうでしょうか。自由に放置されているとまでは言いませんが、医療情報システムベンダーや医療機関の都合に合わせて、かなり多様化・複雑化しているのが現状であり、必ずしも標準化が充分でない場面も少なくありません。
 医療情報システムに標準化は不要でしょうか。確かに、ひとつの医療機関内で情報を利用する限りにおいては、その中で使われるシステム間で情報のやりとり(交換)ができさえすればよく、標準化する必要性は少ないように思えます。しかし、システムにも寿命があり、定期的にシステムの交換をする必要があります。また、状況の変化に応じて新しいシステムを導入することもあるでしょう。そのような時、標準化がされていないことで、相互接続するシステムのベンダー同士が頻繁に話し合いをするとか、システムが取り扱う情報の内容について詳細な取決めをするなどの手間が発生することになります。また、既存システムを入れ替えるとなると、旧システムが保存する情報を新システムに移行することが必要になりますが、別のベンダーの製品を新システムとして選んだ場合には、標準化されていないと移行費用が膨大なものになりがちであるばかりではなく、一部の情報については引き継ぐことができないおそれもあります。
 昨今、関係する医療機関間で連携して診療を行うため、情報を共有しなければならないという必要性も高まっています。そのためには、それぞれが採用している情報システム同士で医療情報を円滑に受け渡しできなくてはいけません。音楽CDによって音楽を授受するように、医療情報もやりとりされることが多くなっているのです。
 また、患者の診療情報は、医療機関にとっては財産です。長期間にわたり患者の診療に利用するのはもちろんのこと、それらを集合的に利用することによって適切な診療方法を発見したり、診療現場の課題を見出したり、診療の効果を測定したりするためのデータとしても利用することが考えられます。
 こういったことが可能であるためには、個々の医療情報の取り扱いが一定の「取決め」の上に成り立つものでなければなりません。ここで必要な「取決め」は、個々の情報を構成する用語やそのコード、情報の構成要素やデータの長さや形式などから情報の伝達方法、システムを運用するときのルールなど多岐にわたります。それぞれについての「取決め」があって初めて、システム交換時にベンダーに縛られず自由に製品を選んだり、医療機関間でスムースに医療情報のやりとりができるようになったりするのです。これらの「取決め」こそが、医療情報の標準化なのです。

 医療情報の標準化は、国際的にはISO(International Organization for Standardization)の技術委員会の一つであるTC215や、HL7(Health Level Seven)、WHO(World Health Organization)、CEN(European Committee for Standardization)、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)などで行われています。我が国からもこれらの国際標準化活動に参加し、我が国の立場を説明したり標準化提案を行ったりしています。
 国内では、HELICS協議会会員である各団体がこれら国際標準の我が国への適用を検討し、我が国の実情にあった利用の方法を整備したり、必要に応じ我が国独自の標準化を行ったりしています。とは言え、まだまだあらゆる場面で利用可能な医療情報の標準化ができあがっているわけではありません。HELICS協議会会員団体は互いに協力しつつ、厚生労働省・経済産業省・総務省などと連携しながら医療情報標準の整備・開発に努めているところです。
 標準(規格)は実際に利用し、実情に合わない部分には改良を加えながら発展させる必要があります。標準開発者と利用者とで開かれた議論を重ねながら、よりよい標準化を進めていかなくてはならないものです。